相続税対策として、不動産を**法人化(不動産管理会社の設立)**する方法は、節税効果や資産管理の効率化を図るうえで有効な手段の一つです。法人を活用することで、不動産にかかる相続税や所得税の負担を軽減し、事業継続性を高めることが可能になります。
以下では、不動産の節税策としての法人化の仕組みやメリット、注意点を詳しく解説します。
1. 法人化による節税の仕組み
(1) 所得税の軽減
不動産収入を個人で受け取る場合、累進課税制度により所得税率が最高55%になることがあります。一方、法人の場合は所得税率(法人税率)が約23%(中小企業は15~23%)で固定されるため、税負担が軽減されます。(注:2025年現在の税率)
(2) 相続税評価額の抑制
不動産を法人に移転することで、相続財産としての評価額を下げることが可能です。
- 法人の株式評価:法人化すると、相続財産は「法人株式」として評価されます。株式評価額は純資産額や事業規模に基づいて計算されるため、不動産そのものを相続するよりも評価額が低くなる場合があります。
(3) 賃料収入の移転
不動産管理会社が賃貸事業を行うことで、賃料収入が法人の収益となり、個人の所得税課税対象から外れます。
(4) 生前贈与を活用
法人株式を後継者に少しずつ贈与することで、スムーズな事業承継と相続税負担の軽減が可能です。贈与税の非課税枠を活用することで負担を抑えられます。
2. 法人化の具体的な方法
(1) 不動産管理会社の設立
不動産管理会社を新たに設立し、既存の不動産を法人に売却または出資する方法です。
- 売却:不動産を法人に売却し、法人が所有権を取得します。ただし、売却益が発生する場合、譲渡所得税がかかる点に注意が必要です。
- 現物出資:不動産を法人の出資財産とする方法。現物出資には資産評価が必要で、専門家のサポートが重要です。
(2) 法人へ不動産を移転
- 移転後、不動産から得られる賃料収入は法人の利益となり、経費を差し引いた残額に法人税が課税されます。
(3) 株式の承継
法人株式を相続または贈与する形で次世代に引き継ぎます。株式評価額は一定の評価方法(純資産価額方式または類似業種比準方式)に基づき計算され、相続財産全体の評価を抑える効果が期待できます。