自宅を競売にかけられたという状況は、住宅ローンの返済ができなくなった場合に発生します。これは通常、債務者が金融機関から借り入れたお金を定められた期間内に返済できない時に、金融機関が債権を回収するための法的措置として取られるものです。
債務が返済不可能な状態になった場合、個人は自己破産という選択肢を考えるかもしれません。自己破産は、裁判所に申立てを行い、個人の全ての負債を法的に免除してもらう手続きです。この手続きをすると、借金の返済義務がなくなり、金融機関などの債権者からの取り立てが停止されます。
自己破産にはいくつかの利点があります。
まず、日々の生活に必要な基本的な物(生活必需品)は没収されることはありません。次に、自宅が競売にかけられた後でも、新しい買主が見つかるまでは、住み続けることが可能になる場合があります。しかし、自己破産にはいくつかのデメリットも伴います。個人が保有している20万円以上の現金は負債の一部として使用されるため没収されてしまいます。また、連帯保証人がいる場合は、その保証人にローンの請求が移るため大きな負担をかけることになります。このため、連帯保証人がいる場合は保証人に迷惑をかけないようにするか、保証人と共に自己破産の手続きを行う必要があります。加えて、自己破産をすると信用情報に傷がつき、一定期間(約10年)新たにクレジットカードを作ることやローンを組むことが困難になります。自己破産すると破産者名簿に名前が登録され、官報に掲載されるなど、社会的な信用を失う可能性があります。
他にも、自己破産をすると裁判所の許可なしには一定期間海外旅行ができなくなるなど、生活に多くの制限がかかることがあります。自己破産は債務者にとっては重要な選択肢の一つですが、その前に法的助言を求め、他の債務整理の方法(例えば個人再生や任意整理など)が適切かどうかを検討することが推奨されます。

破産管財人がつくとプライバシーを踏みにじられます

自己破産の過程で、借金を免除してもらうことを「免責」と呼びます。しかし、全てのケースで簡単に免責を受けられるわけではありません。自己破産を申し立てる際に、もし申立人が一定以上の資産を保有している場合や破産に至った経緯に問題があると判断された場合、裁判所は「破産管財人」という専門家を指名します。
破産管財人は通常、法律の専門家である弁護士で、裁判所によって任命される人物です。この人物の役割は、破産手続き中の財産の管理と債務者の資産の調査、および必要に応じて資産の売却を行うことです。管財人が任命されると、債務者は個人的な財産に関する情報を提供しなければならず、銀行の通帳やキャッシュカード、電子機器なども調査されます。これらの品物は、生活に必要不可欠でないと判断されれば、売却されて借金の返済に充てられることになります。
さらに、破産管財人は債務者が受け取る郵便物もチェックすることがあります。これは、隠し資産がないか、返済に役立つ可能性のある資金が隠されていないかを確認するためです。このプロセスで、もし債務者が代理人弁護士に虚偽の情報を提供していたことが発覚した場合、免責不許可事由、つまり借金の免除を拒否される重大な理由に該当することになります。これは詐欺行為にあたり、刑事責任を問われる可能性があります。免責が許可された後は、再び自己破産を申し立てることができるまでの期間には制限があります。通常、免責許可後7年間は再び自己破産をすることはできません。このようなデメリットを鑑みると、住宅ローンの返済が困難になった場合にすぐに自己破産を選択するのは賢明な判断ではありません。競売になる前に、任意売却、すなわち住宅ローンの担保である不動産を市場で自ら売却することで、借入金の一部を返済し、残りの借金を減らすことができます。任意売却は、競売よりも通常高値で売却することができるため、より多くの債務を返済し、その後の生活の再建資金を確保するのに役立つ場合が多いです。