相続税の生前対策として、資産の組み替えは、相続財産の評価額を抑え、相続税の負担を軽減する効果的な手法です。現金や有価証券など評価額が高い資産を、不動産や収益を生む資産に組み替えることで、評価額の低減や資産の効率的な活用が可能になります。
以下に、資産組み替えによる生前対策の方法や具体例、注意点について詳しく解説します。
1. 資産組み替えの基本的な考え方
(1) 現金や金融資産の評価
現金や金融資産(預貯金、有価証券など)は額面通りで評価されます。そのため、資産が多額である場合、相続税の負担が大きくなりやすいです。
(2) 不動産の評価
不動産(特に土地や収益不動産)は、相続税評価額が時価よりも低くなることが一般的です。
- 土地:路線価(または固定資産税評価額)に基づいて評価されるため、実勢価格より低い。
- 建物:固定資産税評価額で評価されるため、建設費や市場価格よりも低くなる。
(3) 評価の差を活用
現金や有価証券を不動産や収益を生む資産に組み替えることで、相続税の評価額を抑えつつ、資産を効率的に運用できます。
2. 資産組み替えの具体的な方法
(1) 収益不動産への組み替え
現金や金融資産を賃貸用マンション、アパート、商業ビルなどの収益不動産に替える方法です。
- メリット:
- 賃料収入を得ながら、相続税評価額を抑えられる。
- 土地部分に「小規模宅地等の特例」が適用される場合、さらに評価額を下げられる。
- 注意点:
- 空室リスクや賃料収入の減少リスクがある。
- 維持管理コストや修繕費用が発生する。
(2) 現金を建物に替える
現金を使って建物を購入または建設することで、現金の評価額を建物の評価額に替える方法です。建物の評価額は固定資産税評価額を基準にするため、現金よりも評価が低くなる傾向があります。
(3) 土地の購入と活用
現金を土地に替え、さらにその土地を活用して節税効果を高める方法です。
- 広い土地を分割して評価を下げる:土地を複数の区画に分けることで、全体の評価額を下げる。
- 小規模宅地等の特例の活用:特定の条件を満たすと、土地の評価額を50~80%減額できる。
(4) 借入を活用する
借入金を使って収益不動産を購入する場合、その借入金額が相続財産から控除されるため、相続税の課税対象額を減らせます。
- 例:1億円の不動産を購入する際、5,000万円を借入にすれば、その分が相続財産から差し引かれる。
(5) 保険への組み替え
現金を生命保険に替える方法です。
- 死亡保険金は一定額まで非課税となり(法定相続人1人あたり500万円)、相続税の課税対象額を減らせます。